高知家庭裁判所 平成7年(少)3977号 決定 1996年2月20日
少年 Y・E子(昭和51.6.4生)
主文
この事件については審判を開始しない。
理由
1 本件非行事実の要旨は、「少年は、平成7年10月14日午後2時10分ころ、高知市○○町××番地付近道路において、無免許で、かつ、一方通行の道路標識に違反して、原動機付自転車を運転した。」というものである。
2 本件送致にかかる一件記録、戸籍謄本、援助依頼回答書、司法警察員○○作成の捜査報告書、現場指紋等対照結果通知書及び高知家庭裁判所調査官○○の調査結果等によると、以下の事実を認めることができる。
(1) Y・K子(昭和54年12月29日生)は、平成7年10月14日午後2時10分ころ、一方通行の道路標識のある高知市○○町××番地付近道路において、その道路標識に反して原動機付自転車を運転したところ、警察官に現認されて停車を求められたが、無免許運転が発覚したならば、通っていた学校を退学処分になるのではないかと考え、実姉であるY・E子であるかのように装うことにした。そして、氏名につきY・E子、生年月日につき昭和51年6月4日、本籍につき大阪市○○区○○町×丁目×番地、住所につき高知市○△町×丁目×番××号○○アパート1F中とそれぞれ述べたところ、警察官の照会センターへの確認によってY・E子が運転免許証を有していないことが明らかとなったので、Y・E子の道路交通法違反事件として交通事件原票が作成され、Y・K子は、同原票の供述書欄にY・E子名の署名をし、指印をした。
(2) ○○警察署において、上記事件はY・E子の道路交通法違反事件として処理され、同月23日の大阪市○○区役所への電話照会によって、Y・E子の本籍につき大阪市○○区○△町×丁目××番地、住所につき愛媛県宇和島市○○町××番地○○寮となっていることが確認され、その結果を記した身上関係照会電話録取書が作成されるとともに、その照会結果に基づき交通事件原票の本籍欄が訂正され、同年11月15日に高知地方検察庁に在宅事件として送致された。
同検察庁において、Y・E子の道路交通法違反関係の前科につき調査が行われ、同月22日、その調査に関する書面や上記身上関係照会電話録取書等が関係記録として添付されたうえ、少年名Y・E子の道路交通法違反事件が高知家庭裁判所に送致された。
(3) その後、高知家庭裁判所に出頭したY・K子が上記(1)の事実を述べ、同様に出頭したY・E子も自分は本件無免許運転をしていない旨を述べたため、当裁判所は、平成8年1月22日、○○警察署長に対し、本件送致にかかる交通事件原票の供述書欄に押印されたY・E子名下の指印がY・E子本人の指印であるか否かの鑑定につき、援助の依頼を行った。そうしたところ、本件交通事件原票の供述書欄の供述者の指印は、Y・E子のものではなく、その妹のY・K子のものである旨の回答があり、Y・K子によるY・E子の氏名詐称の事実が明白となった。
3 以上の諸事情にかんがみると、本件送致の対象者たる少年はY・E子であると解するのが相当と考えられ、そうすると、少年が、本件無免許運転等を行っていないことは明らかというほかない。
したがって、本件については少年に非行がないことになるから、少年法19条1項により審判を開始しないこととし、主文のとおり決定する。
(裁判官 小倉哲浩)
〔参考1〕 交通事件調査票<省略>
〔参考2〕 援助依頼書<省略>
〔参考3〕 援助依頼回答書<省略>